現在は薄茶色を呈しているが、もとは赤地に径43cmの大きな円文〔えんもん〕を横に三個ずつ五段に表した緯錦〔ぬきにしき〕である。円は四方に方形文〔ほうけいもん〕を置き、その間に五個の白色の珠を並べている。円内は一本の果樹を立て、武人が有翼馬〔ゆうよくば〕にまたがり後ろ向きに獅子に弓を引き絞る図、上下二段に左右対称となるように表している。武人はひげをたくわえ、翼飾りのある冠をかぶり、よろいは千段巻〔せんだんまき〕風の袖を有する兜跋毘沙門天〔とばつびしゃもんてん〕を思わせる西方的な要素を見ることができる。馬の翼は付け根側に亀甲文〔きっこうもん〕と連珠文〔れんじゅもん〕を表し、羽の先は蕨手〔わらびて〕状に巻いている。頸に連珠文帯を巻き、尾は一度しばり、中ほどに花文〔かもん〕を飾っている。
騎馬人物が後ろ向きに弓を引く狩りの方法はパルティアンショットと呼ばれ、ペルシアに起源を求めることができる。本品は武人やパルメットの表現などに西方的な要素が強く認められるが、馬に漢字が表されたことが示すように、製は中国と考えるべきである。ただし、中国の西端地であるトルファンのアスターナより本品ときわめて近似した図様の錦〔にしき〕が発掘されていることから、本品の製作地に関しては十分な検討が必要であろう。

